越前の工芸の現場を訪ねる
1.福井県陶芸館 〜炎と偶然が生みだす美

福井、金沢、新潟、東京から集まったツアー参加者は、最年少の地元福井の小学6年生の女の子、女子大生や主婦、そして金沢、新潟、東京に在住の公務員、会社員といった多彩な顔ぶれの13名。
一行は福井県内の四ヵ所の伝統工芸産地を巡りました。
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まずは福井県陶芸館、越前焼独特の暖かみのある風合いに魅せられ、しばし足を止めて・・・。「炎と偶然がつくる自然の造形に、美を見い出す日本人の美意識が感じられます」との学芸員・田中さんの話に、一同うなずく。越前焼が世に知れれるようになったのは、意外にも20数年ほど前。
隣県の金沢の参加者も「こんな焼物があったとは」と知らない人も。この陶芸館は関西、愛知、岐阜からの来館者が多いそうだ。
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陶芸館・展示室のすぐ横の外露地を入り、檜皮葺き数奇屋づくりの茶室「越知庵」に案内された一同、広間にて茶会。福井県内に誇る茶室でお抹茶をいただきながら、陶芸と茶室の密接なつながりにあれこれ思いを馳せる。この「越知庵」は数寄屋建築の第一人者である中村外二氏により平成三年に改修されたとか。
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さて、お腹もすいてきた一行、今度は、すぐ隣の昼食の場へ移動し越前地方の料理「蕎麦」を賞味する。越前地方によくみられる妻入り民家の空間で蕎麦懐石(つゆ、薬味と大根おろしを混ぜた冷汁で食する蕎麦)を楽しむ。晩秋の肌寒い日でしたが、冷たい蕎麦がじつにうまい!


2.陶芸教室 〜手ひねり体験

幼稚園以来の粘土細工だったせいか、全員とも次第に「こね回し」「手ひねり」に没頭し始め、だんだん無口になってゆく。「壷」のつもりがいつの間にか「皿」や奇妙な形状の作品に。意外にスピード感、この形とデザインでという緻密イマジネーションも必要なことに気づくが、、、、既に遅し。描いた通りの作品が出来た人はきっと極少数(!?)に違いない。
1ヶ月後に、うわぐすりが塗られ焼き上がった「作品」が、それぞれの自宅に届いている。
さて、完成品はどうだったであろう、、、、自分だけの素敵な芸術作品には違いないと思うが。
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3.共同陶房 〜越前焼の陶芸作家の仕事場

「手ひねり」に少々汗を流した一行、午後は、宮崎村の村営の共同陶房(のぼり窯)を見学。若手陶芸作家の大屋宇一郎さんの仕事場、作品を拝見する。里山のような所の斜面に造られた「のぼり窯」は10数メートル程の階段上の窯で、焼く時は窯づめ約10日、焼くのが3日、その後仕上げ等で5日で、およそ20日間が要するそうだ。延べ人工に換算すると約100人もの人手がかかる大仕事だ。仲間、協力者がいないと出来ない仕事で、作品の値段も少々高くなることもうなずけた。
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4.タケフナイフビレッジ 〜今度は刃物づくり

>>> TAKEFU KNIFE VILLAGE

700年もの歴史を持つ武生の刃物づくり、一連の作業が見渡せる製造工程を見学。鉄の匂い、朱色に焼ける鉄、飛び散る火花、規則正しく刻まれる金属音の鎚音...。打刃物の工房は迫力に満ちていた。

ここで一行はペーパーナイフづくりにチャレンジ。
銅板を叩き伸ばし、輪郭を描いて専用鋏でカット。刃になる部分を磨き、硫黄の匂いの溶剤(実は入浴剤とのこと)で着色し、銘を刻んで、名刀?(ペーパーナイフ)のでき上がり。と工程は単純だが、小さなナイフ一つ造るための、中ハンマーでの銅板叩き作業はかなり根気と力のいる作業。なぜか、「叩き上げ」という言葉が浮かんだ体験でした。
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5.交流会 〜伝統工芸産地の若手職人さんたちと意見交換

粘土細工、刃物づくりなど、工芸の一旦に触れ慣れない手作業を体験したツアー一行の第一日目の夜は、地元の若手職人、問屋さんたちとの交流会を開く。「工芸」「観光」の話をはじめ、日頃の工芸を通じた話題など、短時間でしたが、いろいろと舞台裏や観光客としては分からない、見ない部分を少し垣間見られ、勉強になり、また、楽しい一時を過ごしました。こういうコミュニケーションって大事だな、と痛感。また、伝統の漆器と料理、調理のことなど美味しい物、文化についても堪能したが、、、、それは言葉では伝えにくいもの(ご了承ください)。
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6.軒下工房 〜伝統+現代の融合、未来へ繋ぐ技を探求する職人たち

>>> 軒下工房

漆器木工という、表立ってはなかなか見ることができない製品の工房を訪ねる。木工職人・井上孝之さんから、木工製品、下地行程などについて説明をうける。
製作工程では、多くの人が作り方に興味をもつとか。
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続いて、漆器蒔絵職人・松田祐明さんの指導で、早速、銘々皿の「蒔絵」絵づけを体験。「上手く描けたら蒔絵師に転職しようかな、、、」の声に、「弟子入の場合は、まず玄関掃除からですね」(松田さん)と一喝され、職人の世界の厳しさやしきたりなどを覚悟のうえで、また、生半可な気持ではとてもつとまらない、という雰囲気もちょっと感じた時間でした。それにしても、絵づけをする細い筆など、極めてシンプルな道具での漆工芸は不思議で優美な世界だ。なんでも「ねずみの毛」がいい筆だとか。
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7.松屋漆器店 〜「蒔絵」天井を眺めながら、越前料理フルコース

>>> 松屋漆器店

贈答用、お祝い、記念品用など木製漆器を扱う越前漆器専門店として有名な松屋漆器店(河田町)の一室をお借りして、料理を一人分ずつ配した朱塗り膳で昼食をいただく。かつては越前のハレの行事に欠かせなかったトラディショナル・スタイルの料理を食する。

この地域では食堂、レストランなるものが極めて少なく、何か行事があると仕出し屋だんが、そのような「膳」をつくってくれるようだ。これも伝統的な越前文化の一旦、と種類、量とも揃った料理を食しながら妙に感心した昼食でした。
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8.大瀧神社 〜今立に紙を伝えた「紙の神」、川上御前

「今立」「紙」を訪ねるうえで、大瀧神社(今立町大滝)詣では必須といことで神社に向かう。越前和紙の発祥伝説でしられる大瀧神社この日は、一面に銀杏の木と落葉が広がる静かで身も引締まる冷たい空気に包まれていた。銀杏の木ってこんなに高かったかと、改めて見上げてしまった一行。

境内から石段を上がり、木造銅板葺、檜皮葺の拝殿・本殿・奥院は千有余年の歴史をもつ。静寂の中に佇む社殿には複雑な彫刻が随所に配され、四層に重なり陰影を深める屋根が荘厳な雰囲気を醸していた。周囲の灯篭の枠に白い紙が貼ってある光景は、ここ「紙の神」さまを祀る大滝神社ならではだろう。日本国・大蔵省印刷局も祖としている説明板も発見。
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9.今立町 〜越前和紙の里通り

>>> 伝統と自然が息づく町 今立

大瀧神社から武生駅方面に向かい、今立町新在家のパピルス館〜卯立の工芸館〜和紙の里会館など、町を散策。歴史、文化、職人技などに触れながら、いつしか1500年の歴史と伝統のある町、今立、そして越前和紙の世界を探訪できたが、少し時間が足りなかった。

「和紙漉き」体験では、今立の町を実際に歩きいろいろなことを肌で感じると、伝統の技術がいかに大切で、熟練するのに何年もの歳月がかかるのかが、身体で理解できた体験でもあった。やはり旅は五感がフル活動しないと、面白さも、魅力も薄らいでしまうと痛感。
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10.長田製紙所 〜越前和紙の現場

次は、いよいよ手漉き作家の製作現場を訪ねる。越前和紙の若手作家・長田和也さんの工場というか工房を見学。歴史が積み重なった木造の家と作業場が一体的に入り組んだ空間の「製紙所」で、紙の原料(楮・三椏・雁皮など)が交じり合った独特の匂いが、建物内に充満し、これも初めての体験。

植物の靭皮繊維を主原料とする紙漉き、普通の人はこの舞台裏は全くと言っていいほど知らないはず。ここでも長年の経験と感や原料に熟知した創作センスが「鍵」となっていると、長田さんの話を聞きながら納得。原料から紙漉きまでの色々な行程を吟味する繊細な感覚、日本人だからこそ発揮できる技、センスかも知れない。
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11.越前和紙問屋・杉原商店(自宅) 〜体験ツアーを振り返る

体験ツアーの終点は、「和紙の里」にふさわしい、なんと20代目(?)の越前和紙問屋の専務・杉原吉直さんの歴史ある会社・自宅におじゃまする。数百年に渡って続いてきたという杉原家、伝統的家屋であるご自宅を拝見。築数百年の家は玄関に一歩入っただけで空気も違う感じ。歴史ある家の風情に感心しながらお茶を頂き、心休まる一時をすごした。

杉原商店の紙製品は実に多彩で、伝統、モダンなど種類や形もアイテム数が豊富、凄い。
日本はもとより海外でも人気がある。古くて新しいセンスの和紙(漆和紙など)で、「ふくいウェーブ賞」「日本クラフト賞」なども受賞し、20代目杉原さんも、全国を駆け巡っている様子。

無事プレ体験ツアーを終えることが出来、親子で参加された方も笑顔がほころんだ。今回のツアーレポートとアンケートを提出してもらい、一行、夕闇の今立町を後にしたのでした。ちょっと忙しかったが密度の濃い旅であったと、一同、充実した2日間に満足。
また、少し違った工芸体験ツアーを想いながら。
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